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実習・実践で使える!正常圧水頭症のシャント術後管理と看護のポイント

正常圧水頭症の看護と関連図

今回は正常圧水頭症とシャント術後の管理について勉強するよ!

この記事では正常圧水頭症とシャント術後の看護のポイントについて記載しています。正常圧水頭症の病態について知りたい方、術後の合併症や看護について学びたい方におすすめです。

水頭症とはどんな疾患?

水頭症の種類

脳を衝撃などから守るために脳脊髄液が絶えず循環しており、側脳室・脳室で脳脊髄液が産生された後にくも膜下孔に入ります。

この脳室からくも膜下孔までの経路が炎症や出血・腫瘍などにより閉塞や狭窄することで、脳脊髄液が循環できず貯留してしまうことで頭蓋内圧亢進や脳室が拡大します。

水頭症には交通が閉塞することで急激に脳室が拡大する非交通性水頭症と、狭窄や吸収ができないことでゆっくりと脳室が拡大する交通性水頭症の2つに分けられます。

水頭症の種類原因特徴
非交通性水頭症脳出血
脳腫瘍
脳梗塞
急激に脳室が拡大するため
急変する可能性がある
続発性正常圧水頭症(交通性)くも膜下出血
髄膜炎
ゆっくりと脳室が拡大
突発性正常圧水頭症 (交通性) 原因不明アルツハイマーとの鑑別が困難
水頭症の種類と特徴

正常圧水頭症の症状

正常圧水頭症はさらに原疾患が原因で脳脊髄液の循環が妨げられてしまう続発性正常圧水頭症と原因不明で生じる突発性正常圧水頭症の2つに分けられます。

頭蓋内圧は正常範囲ですが、脳室が拡大することで歩行障害・認知症状・失禁の症状が出現し進行します。

歩行障害

すくみ足・すり足・小刻み歩行・突進現象などの特徴的な歩行見られます。また、不安定性といった方向転換時に不安定になる歩行も見られます。

歩行障害のため転倒リスクは高いため注意が必要です。

転倒防止のためにセンサーマットなど使用する時は、すり足歩行のためにセンサーマットに躓いてしまい逆に転倒リスクを高める可能性もあります。どんな歩行障害が強いのかアセスメントして転倒予防をしましょう。

認知症状

自発性の低下や無関心、見当識障害、注意力低下、計画的な行動が困難になる遂行機能障害、物忘れなどがみられます。

失禁

尿意を感じても自発性の低下・無関心によりトイレに行こうとしない、歩行障害のためにトイレに間に合わず失禁する場合があります。

正常圧水頭症の検査

タップテスト(腰椎穿刺)

タップテストとは、脳脊髄液を30~50ml除去した後で歩行障害などの正常圧水頭症の症状がどの程度改善を確認する検査です。

タップテストで症状が改善した場合シャント術の有効性が高いとされるため、シャント術により症状の改善が期待できるかどうかを判断するために行います。

症状の改善には個人差があり、数日にかけて観察する必要があります。

症状の変化を判断するためのテスト「アップ&ゴーテスト(TUG)」って何?

タップテストが効果があったのかを判断するためのテストです。座位から立ち上がり、3m先でUターンして戻ってきて座るまでの動作の時間を図ります。タップテストの前よりも10%以上時間が短縮すればタップテストの効果があったと言えます。

シャント術

シャント術の種類

貯留している脳脊髄液をほかの場所に排出できるように通路を作る手術です。体内で髄液を吸収できる場所である腹腔内・心房内にシャント術が行われます。

シャントの部位により創部も異なるため、術後の観察のためにもどこに創部があるのかを把握しておく必要があります。

シャント術の種類
シャント創部
V-Pシャント(脳室ー腹腔)頭部・前胸部・腹部
V-Aシャント (脳室ー心房)頭部・頸部
L-Pシャント (腰椎ー腹腔)腰部・側腹部・腹部
シャント術の種類と創部

腹膜炎や腹部の大きな手術の既往があるとシャント留置が困難な場合があります。その際にはV-Aシャントも選択肢に入ります。

V-Aシャントは感染症が起きたときに重篤化しやすいため現在はV-PシャントとL-Pシャントが一般的だよ。

シャント術後の合併症

感染症

シャント感染を起こすと髄膜炎や腹膜炎におよぶリスクもあるため、感染徴候を早期に発見できるよう観察が大切です。シャント管に沿った発赤や熱感があるのが特徴です。

シャント機能不全

シャント閉塞

シャントに生体組織などが詰まり閉塞してしまうことがあります。この場合は髄液が排出されないため脳室に脳脊髄液が貯留してしまうため、水頭症が再発してしまいます。頭蓋内圧亢進症状や意識レベルの変化などないか経時的に観察します。

低髄圧症候群

臥位では無症状なのに起床時に頭痛を訴える場合には低髄圧症候群を起こしている可能性があります。シャント術後初期に起こりやすいです。座位や立位によりサイフォン効果で髄液が流れすぎてオーバードレナージとなり頭痛を起こします。もともと拡大していた脳室がオーバードレナージによる強い陰圧がかかることで硬膜下血腫・水腫を合併することもあるため、症状が見られたら医師に報告しバルブ圧の調整が必要になります。

L-Pシャント

頭蓋内出血

脳室を穿刺するため術直後は頭蓋内出血に注意が必要です。意識レベルや神経学的所見に変化がないか観察します。

V-Pシャント術

髄液漏

体の低い位置である腰部に創部があるため髄液漏を生じやすいです。髄液漏による膨隆はゆっくり進行するため疼痛などの自覚がないため、腰部の膨隆がないか経時的に観察します

馬尾神経障害

腰部にシャントがあるため、シャントの位置がずれたりすると 馬尾神経障害が生じることがあります。腰部から下腿にかけてしびれがないか注意します。

シャント術後の看護のポイント

感染徴候の観察

シャント管に沿った疼痛・発赤・熱感はシャント感染の可能性があります。とくに腰部に創部があるL-Pシャントでは、失禁による汚染のリスクも高いため保清をしっかり行います。

排便コントロール

腹腔内にシャントがあるL-Pシャント・V-Pシャントでは便秘に注意が必要です。便秘により腹腔内圧亢進すると髄液の流れが悪くなりシャント流量に影響するリスクがあるため排便コントロールを行います。腸穿孔やイレウスを起こす場合もあるため、排便コントロールは重要です。

腹部症状

シャント術による創部は小さいですが、腹腔に創部がある場合は腹腔内出血のリスクもあります。創痛と間違えないように腹部の膨満・緊満の有無を確認します。

リハビリ

術後臥床時間が長いと、シャントを増設してもドレナージが不十分になる傾向があります。術後から離床を進めていきます。離床が難しい場合でも座位やベッドアップの時間をできるだけ長くしてドレナージが過少にならないようにします。

正常圧水頭症の看護のポイントまとめ

  • 転倒に注意した環境整備をする
  • シャント機能不全の有無を確認するために経時的に神経学的所見を観察する
  • 排便コントロール
  • 創部の感染徴候の有無の観察
  • 積極的に離床を行う

正常圧水頭症の関連図

実習にそのまま使える水頭症とシャント術後の関連図
水頭症とシャント術後の関連図
参考文献

脳神経看護ケア関連図 百田武司・森山美知子

パワーアップ∞ 脳神経外科看護のポイント282

ブレインナーシング 第36巻5号 術後ケアのポイント

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