今日は人工血管術後の人を受け持つぞ!
人工血管術は部位によって手術や合併症も異なるのでまずは解剖生理を理解しておこう
この記事では大動脈基部置換術の術後看護についてまとめています。
大動脈基部ってどこ?
大動脈の手術は部位によって注意することが異なります。それぞれの解剖生理について整理しながら術後合併症に注意していきましょう。
大動脈人工血管置換術は基部・上部・弓部・下部・胸部・腹部に分けて部位別に考えます。
大動脈基部とは大動脈弁と冠動脈の出口がある大動脈の根本のことです。
大動脈基部置換術の種類
大動脈人工血管置換術の術式
- 大動脈基部置換術
- 上行大動脈置換術
- 弓部大動脈置換術
- 下行大動脈置換術
- 胸腹部大動脈置換術
- 腹部大動脈置換術
- ステントグラフト内挿術
大動脈基部置換術では言葉の通り大動脈基部を取り換える手術になります。大動脈基部には大動脈弁、心臓の栄養血管である冠動脈があるため大動脈弁の置換または温存、冠動脈の再建または取り換えが必要になります。術式にはBentall(ベントール)法、David(デービット)法、Yacoub(ヤクー)法がありますが、これらの手術の大きな違いは大動脈弁を人工弁に置換するか、自己弁を温存するかです。
大動脈基部の手術では大動脈弁の置換(温存)と冠動脈の再建を行う必要がある
- Bentall(ベントール)法:人工弁に置換。人工弁のため抗凝固薬の内服が必要
- David(デービット)法:自己弁温存
- Yacoub(ヤクー)法:自己弁温存
大動脈基部置換術後の看護
大動脈基部置換術後の管理
手術はどれも人工心肺装置を使用して行われます。侵襲が強い手術になるため、術後の回復に時間を要しますが、血管の手術のため心機能には問題が無いことが多いです。大動脈疾患を患っている場合、動脈硬化により血管が固く脆くなっているため、血圧コントロールが重要になってきます。一方で低血圧になっても人工血管内の血流が滞り血栓形成のリスクを高めてしまいます。
高くても低くても合併症のリスクがあるから血圧のコントロールがすごく重要になってくるんだね。
低体温による侵襲により血液凝固異常、心房細動、房室ブロックなどの徐脈性不整脈にも気を付ける必要があります。術後は膀胱温で測定し速やかな復温に努めます。
術後合併症
周手術期心筋梗塞
冠動脈の再建により冠動脈の屈曲や狭窄を起こすことがあります。冠動脈の狭窄は狭心症状や術後心不全を誘発する恐れがあります。ST変化や不整脈に注意し心機能低下に気を付ける必要があります。
出血
大動脈置換術は弁の置換と冠動脈の再建を行うため吻合している場所が多いのが特徴です。吻合部が多いほど出血するリスクは高まります。また、大動脈基底部では高い圧がかかりやすく、血圧の上昇によっても出血を来しやすいです。さらに体外循環の時間が多く、手術中は低体温にするため血液凝固機能が低下し易出血の状態になります。覚醒による血圧上昇がないか気を付ける必要があります。
- 血圧コントロール
- 採血データやACTを測定
- 速やかな復温を行う
- ドレーンの排液量、性状に注意する
大動脈弁閉鎖不全症
上行大動脈瘤や大動脈弁輪部にまで解離が及ぶ場合は術前から大動脈閉鎖不全症(AR)が生じていることがあります。術後ARが残存してしまう場合は術後心不全に注意が必要です。
大動脈基部置換術後の看護まとめ
参考文献
やさしくわかる心臓血管外科
心臓血管外科の術後管理と看護
患者がみえる新しい病気の教科書 かんテキ 循環器